常寂光寺は慶長元年(1596年)、日蓮宗・本圀寺第16世の日禎上人が俗世を離れて小倉山に隠棲したことに始まる。創建地は、鎌倉時代の歌人・藤原定家が小倉百人一首の歌を選んだとされる時雨亭の旧跡と伝わり、寺名は仏教の理想浄土である「常寂光土」に由来する。境内に現存する多宝塔は桃山時代の建築様式を伝える遺構であり、国の重要文化財に指定されている。江戸時代を通じて日蓮宗寺院として法灯を継承し、嵯峨野の文化的景観の一部を形成してきた。明治期の神仏分離令による打撃を経ながらも伽藍は維持され、近代以降は小倉山中腹の豊かな自然環境とともに、とりわけ秋の紅葉の名所として広く知られるようになった。現在も苔むした参…