常楽寺は825年(天長2年)、比叡山延暦寺の慈覚大師円仁によって開創されたと伝わる天台宗の古刹である。北向観音堂の本坊として機能し、別所三楽寺(安楽寺・大法寺・常楽寺)の一角を担ってきた。平安時代後期には、現在も境内に残る石造多宝塔が造立されたとされ、自然石を巧みに利用したその造形は石造建築の遺例として学術的に高く評価され、国の重要文化財に指定されている。中世には北条氏ゆかりの信仰が別所の地に根付き、当寺もその庇護を受けたと伝わる。近世を通じて別所温泉の精神的中核として機能し続け、北向観音との一体的な信仰形態は「善光寺と向き合う観音」として広く知られた。明治期の廃仏毀釈の影響を受けながらも法灯…