正定院は、慶長年間(1596〜1615年)に増上寺の塔頭として創建された浄土宗の寺院である。増上寺は徳川家康が江戸入府後に現在の芝の地へ移転(1598年)させ、徳川将軍家の菩提寺として整備したが、正定院はその体制が整えられた慶長期初頭ごろに開創されたと伝わる。増上寺三十六坊の一つに列せられ、将軍家の祈願所としての格式を付与されたとされる。江戸時代を通じて増上寺大本山を護持・補佐する塔頭寺院としての役割を担い、念仏修行の道場として機能した。境内に残る石仏群は江戸時代に造立されたものと伝わり、当時の信仰風景を今に伝えている。明治初年の神仏分離・廃仏毀釈の影響により増上寺の塔頭群は大きく再編されたが…