全龍寺は1540年(天文9年)、北条氏によって小田原城下に創建されたと伝わる臨済宗の寺院である。北条氏政の時代に伽藍が整備され、城主たちが参禅する禅の道場として格式を高めたとされる。城山の高台という立地は、小田原城と密接に結びついた寺院の性格を象徴している。1590年(天正18年)、豊臣秀吉による小田原征伐の際には城下全域が戦乱に巻き込まれ、寺も大きな被害を受けたと伝わる。北条氏滅亡後、小田原藩主となった大久保氏の庇護を受けて再建され、近世を通じて城下の仏教文化を担う寺院として存続した。江戸時代には臨済宗の禅寺としての法灯を守り続け、地域の信仰を集めた。明治維新以降の近代においても寺院としての…