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建築
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ARCHITECTURE
五重塔の構造と歴史——なぜ地震に強く倒れないのかの歴史と現地
五重塔はインドの仏塔(ストゥーパ)を源流に持ち、釈迦の遺骨(仏舎利)を祀る聖なる建造物。法隆寺・東寺・醍醐寺・法観寺・浅草寺の五重塔を解説。心柱が揺れを制御する古代の免震構造と各塔の歴史的特徴を紹介する。
目次
MOKUJI
五重塔の起源——ストゥーパから日本の塔へ
五重塔の耐震構造——心柱免震の仕組み
日本を代表する五重塔——スポット別解説
五重塔の比較——一覧表で見る特徴
五重塔参拝時のポイント——巡礼コース提案
よくある質問
五重塔は仏舎利(ぶっしゃり)——釈迦牟尼仏の遺骨を祀る聖なる塔で、インドのストゥーパ(仏塔)がシルクロードを経て中国・朝鮮半島を渡り、日本へ到達した形だ。千年以上の歴史を持ちながら大地震にも倒れない独自の構造は、現代の建築工学からも注目を集めている。
法隆寺五重塔(奈良県斑鳩町)— 現存する世界最古の木造塔、高さ約32.5m
Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 / 663highland
五重塔の起源——ストゥーパから日本の塔へ
五重塔の源流は紀元前3世紀のインドにある。釈迦の入滅後、その遺骨(仏舎利)は分骨されて各地にストゥーパ(半球形の土台に柱を立てた建造物)に納められた。この形式が中央アジア・中国を経由して変化し、中国では「楼閣式(ろうかくしき)」の多層塔となり、朝鮮半島を通じて日本へ伝来した。
五重塔の「五重」は何を意味するか?
五重塔の「五」は仏教の「五大(ごだい)」——地・水・火・風・空という宇宙を構成する五つの要素——を象徴する。各層が宇宙の一要素を表しており、塔全体で「宇宙の全体性」を体現するとされる。
象徴
意味
第1層(初層)
大地・安定
第2層
流動・豊穣
第3層
情熱・変化
第4層
動き・広がり
第5層(最上層)
虚空・解脱
五重塔の内部には何がある?
五重塔の内部は通常一般公開されていない。最下層には本尊像(仏像)と心礎(しんそ)が置かれ、心礎の中に仏舎利(または仏舎利の代わりとなる宝珠や経典)が納められているのが一般的だ。
東寺五重塔(京都府)— 高さ約54.8mで日本最高の木造建築物
Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 / 663highland
五重塔の耐震構造——心柱免震の仕組み
なぜ五重塔は大地震でも倒れないのか?
五重塔が地震に強い理由は、**心柱(しんばしら)**と呼ばれる中央の柱にある。心柱は最上部から地面まで独立した1本の柱で、各層の構造材とは直接固定されていない。地震が起きると塔の各層がばらばらに揺れ、心柱が「振り子のおもり(マスダンパー)」の役割を果たして揺れのエネルギーを分散させる。
この原理は1990年代に東京スカイツリーの設計に応用された。スカイツリー中央に設けられた「制振柱」は法隆寺五重塔の心柱から着想を得たとされており、古代の耐震技術が現代建築に生きている。
心柱は地面に固定されているのか?
法隆寺の五重塔では心柱の根本(心礎)は地面に置かれているだけで固定されておらず、宙に浮いた状態(心柱が2層目からぶら下がる形式)の塔も存在する。この「浮いた心柱」が地震時に振り子として機能する。
醍醐寺五重塔(京都府伏見区)— 天暦5年(951年)建立、京都最古の木造建築物
Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 / 663highland
日本を代表する五重塔——スポット別解説
法隆寺の五重塔——世界最古の木造五重塔
法隆寺(奈良・斑鳩町)西院伽藍の五重塔は607年の創建(後に再建)とされ、世界最古の木造建築群の一つだ。高さ約32.5m、最下層と最上層の屋根の比が3:2で、建ちあがるにつれ屋根面積が小さくなる独特の安定感が特徴。最下層の塑像群(釈迦入滅・涅槃など)は奈良時代初期の傑作として国宝に指定されている。
東寺の五重塔——日本最高の五重塔
東寺(教王護国寺)(京都)の五重塔は高さ54.8mで日本一の高さを誇る。空海(弘法大師)が平安時代に創建した真言密教の根本道場にそびえる塔で、現在の塔は寛永21年(1644年)の再建。心礎に仏舎利が納められており、密教の宇宙観を体現する塔として崇敬を集める。夜間ライトアップの美しさでも知られ、京都の夜景の定番だ。
醍醐寺の五重塔——京都最古の木造建造物
醍醐寺(京都・伏見区)の五重塔は951年の建立で、京都府内最古の木造建造物だ。高さ38mで、外観は創建当初の姿をほぼ留める。醍醐の花見(豊臣秀吉が催した花見)の舞台となった伽藍は世界遺産(古都京都の文化財)に登録されており、五重塔は桜の季節に特に美しい。
法観寺(八坂の塔)——京都東山のシンボル
法観寺(八坂の塔)(京都・東山区)の五重塔は高さ46mで、東山の町並みに突出する「京都の夜明け前の顔」として親しまれる。聖徳太子が創建したとも伝わる古刹で、現在の塔は15世紀の再建。祇園・二年坂・産寧坂(三年坂)の石畳から眺める塔の姿は、京都観光の定番の風景だ。
浅草寺の五重塔——下町の空に立つ東京の塔
浅草寺(東京・台東区)の五重塔は高さ53.32mで、東京スカイツリーとともに浅草の空のランドマークだ。太平洋戦争で焼失し、昭和48年(1973年)に再建されたコンクリート製の塔だが、外観は木造の伝統様式を踏襲する。
法観寺五重塔(八坂の塔)— 東山の石畳に映える46mの塔
Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 / Fg2
五重塔の比較——一覧表で見る特徴
塔名
所在地
高さ
創建
特記事項
法隆寺五重塔
奈良・斑鳩
32.5m
607年(後に再建)
世界最古木造、国宝
東寺五重塔
京都
54.8m
9世紀(1644年再建)
日本最高、国宝
醍醐寺五重塔
京都・伏見
38m
951年
京都最古木造建造物
法観寺(八坂の塔)
京都・東山
46m
15世紀再建
東山のシンボル
浅草寺五重塔
東京・台東
53.32m
1973年(再建)
東京のランドマーク
浅草寺五重塔(東京都台東区)— 昭和48年再建、最上層にスリランカから請来した仏舎利を安置
Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 / Kakidai
五重塔参拝時のポイント——巡礼コース提案
京都五重塔1日参拝コース
東寺・醍醐寺・法観寺を1日で効率よく巡るコース:
1.
午前: 東寺(教王護国寺) — 日本最高の五重塔と密教の宇宙観を体感
2.
: 伏見稲荷方面で昼食
3.
午後: 醍醐寺 — 京都最古の五重塔。桜の季節(4月上旬)は特に美しい
4.
夕方: 法観寺(八坂の塔) — 夕暮れの東山の風情を楽しむ
よくある質問
五重塔の内部は見学できますか?
通常は非公開だが、法隆寺・東寺などで期間限定・特別公開が行われることがある。各寺院の公式サイトや観光案内で確認を推奨する。
三重塔と五重塔はどう違うのですか?
「三重塔」は3層、「五重塔」は5層の仏塔で、いずれも仏舎利を祀る宗教建造物。五重塔のほうがより高く格式が高いとされるが、三重塔も重要文化財・国宝に指定されているものが多い。
世界遺産の五重塔はいくつありますか?
法隆寺(奈良)・東寺(京都)・醍醐寺(京都)の五重塔はいずれも世界遺産に含まれる。法隆寺は「法隆寺地域の仏教建造物」として、東寺と醍醐寺は「古都京都の文化財」として登録されている。
五重塔の相輪(くるまや)は何本ありますか?
五重塔の頂部には「相輪(そうりん)」と呼ばれる金属製の飾りがある。相輪の輪の数は9輪が標準(九輪)で、その上に水煙・竜車・宝珠が続く構造だ。
五重塔の各層には仏像が安置されているのですか?
一般的には最下層(初層)にのみ仏像が安置され、上層は空になっている場合が多い。法隆寺五重塔では初層に釈迦入滅・涅槃のシーンを表す塑像群が四方に配置されている(「四面塑像」)。
最終更新: 2026年4月25日
── 了 ──
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