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彼岸とお彼岸参り——春分・秋分に先祖を供養する仏教行事を巡る
お彼岸は春分・秋分を中心とした前後3日間、計7日間の仏教行事で、先祖の墓参りと寺院参拝を行う。彼岸花・ぼたもち・おはぎの由来と、四天王寺・善光寺・法隆寺・東大寺・成田山新勝寺の彼岸法要を解説する。
目次
MOKUJI
彼岸の意味——仏教的な「あの世」への橋渡し
ぼたもちとおはぎ——彼岸の伝統的な供え物
彼岸花(曼珠沙華)——なぜ墓地に咲くのか
彼岸参りにおすすめの寺院——全国の彼岸法要スポット
彼岸参り・墓参りの作法
よくある質問
お彼岸は**春分の日(3月20日ごろ)と秋分の日(9月23日ごろ)を中日(なかび)**として、前後3日間ずつ、計7日間にわたる仏教の慣行だ。この時期に先祖の墓参りをして供養し、菩提寺に参拝するのが日本の伝統的な習慣だ。日本独自の発展を遂げた仏教行事で、インド・中国には同様の行事はない。
千葉県香取市の和菓子店に並ぶぼたもち(左)とおはぎ(右)。春彼岸は牡丹の花にちなんで「牡丹餅」、秋彼岸は萩の花にちなんで「御萩」と呼ぶ。どちらも同じもち米と小豆あんの菓子で、小豆の赤色には古来から邪気を祓う意味がある。
Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 / photo by Katorisi
彼岸の意味——仏教的な「あの世」への橋渡し
「彼岸(ひがん)」は仏教用語で、**「あの世(死後の世界)」または「悟りの境地(涅槃)」**を意味する。「此岸(しがん)」が私たちの住む「この世」を指すのに対し、「彼岸」は煩悩を超えた悟りの世界だ。
なぜ春分・秋分に行うのか?
春分・秋分は太陽が真東から昇り、真西に沈む日で、この世(此岸)とあの世(彼岸)の距離が最も近くなると考えられてきた。仏教では西方に極楽浄土(阿弥陀仏の世界)があるとされており、真西に沈む太陽を拝んで先祖の供養と極楽往生を祈る習慣が生まれた。
彼岸はいつから日本で行われているか?
時代
彼岸行事の変化
延暦25年(806年)
平城天皇の勅令で諸国の国分寺に彼岸会(ひがんえ)が命じられる(日本最古の記録)
平安時代
宮廷での彼岸行事が定着
鎌倉〜室町
武家・庶民に普及
江戸時代
墓参りの習慣と結びつき、現代の形が確立
現代
「春分の日」「秋分の日」が国民の祝日に(1948年)
大阪・四天王寺の西門石鳥居。聖徳太子が推古天皇元年(593年)に創建したこの寺の西門前には石造の鳥居が立ち、その真西に大阪湾が広がる。春分・秋分の夕刻、太陽は石鳥居の中央を通って水平線に沈む——日想観の修行が最も完全な形で成立する「極楽の東門」とされる場所だ。
Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0 / photo by Gohachiyasu1214
ぼたもちとおはぎ——彼岸の伝統的な供え物
ぼたもちとおはぎは同じ食べ物か?
**ぼたもち(牡丹餅)おはぎ(御萩)**は基本的に同じ食べ物(餅米をこしあんや粒あんで包んだ和菓子)で、季節によって名前が変わる:
季節
名称
由来
春彼岸
ぼたもち(牡丹餅)
春に咲く「牡丹(ぼたん)」に似た形から
秋彼岸
おはぎ(御萩)
秋の「萩(はぎ)」の花に似た形から
なぜ彼岸にぼたもち・おはぎを食べるのか?
あんこの原料の小豆(あずき)は赤い色が邪気を祓うとされ、古来から魔除けの食べ物として供物に使われてきた。先祖の霊を邪気から守るとともに、彼岸の時期の季節の花(牡丹・萩)に見立てた美しい食べ物として定着した。また小豆は当時は高価な食材であり、年に数回の彼岸に先祖に捧げる「ご馳走」でもあった。
東京都内の墓地に設けられた典型的な和式墓所。花立て・香炉・水鉢が整えられ、仏花と線香が供えられる。彼岸の墓参りでは、まず墓石を水洗いして清め、花と線香・ぼたもち(春)またはおはぎ(秋)を供えて先祖への感謝と近況を伝える。
Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 / photo by Chris 73
彼岸花(曼珠沙華)——なぜ墓地に咲くのか
**彼岸花(ひがんばな)**は学名「リコリス・ラジアータ」、別名「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」とも呼ばれる秋の花で、お彼岸の時期(9月下旬ごろ)に真っ赤な花を咲かせる。日本各地の田んぼのあぜや墓地に群生することで知られる。
彼岸花はなぜ墓地に多いのか?
球根(鱗茎)が有毒で、もぐらやネズミが近づかない→昔は墓を荒らされないよう植えられた
秋彼岸の時期に合わせて開花する→「死者の花」「あの世の花」という象徴的意味が生まれた
仏教の言葉「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」はサンスクリット語で「天界の花」を意味する
栃木県小山市・天翁院境内に咲く彼岸花(曼珠沙華、ヒガンバナ)。秋彼岸(9月の秋分前後)に全国の寺社で一斉に開花し、参道を真っ赤に染める。梵語で「天界の花」を意味する「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」の名は法華経に由来し、めでたいことが起こる前兆として赤い花が天から降るという伝説に基づく。
Wikimedia Commons / Public Domain / photo by Tatsundo h
彼岸参りにおすすめの寺院——全国の彼岸法要スポット
四天王寺(大阪)——彼岸法要の聖地
四天王寺(大阪市天王寺区)は聖徳太子が593年に創建した日本最古の官寺の一つで、お彼岸(春・秋)には「日想観(にっそうかん)」の儀式が行われる。四天王寺の石鳥居を通して真西に沈む夕日を拝む「日想観」は、日本での彼岸信仰の原型とも言われ、春分・秋分当日には多くの参拝者が夕日を拝む。
善光寺(長野)——阿弥陀如来と彼岸の縁
善光寺(長野市)は「遠くとも一度は詣れ善光寺」と謳われる浄土信仰の聖地で、一光三尊阿弥陀如来(秘仏)を本尊とする。阿弥陀如来は西方極楽浄土の主で、彼岸の時期との縁が深い。お彼岸には多くの参拝者が先祖供養と彼岸の参拝のために訪れる。
法隆寺(奈良)——飛鳥時代から続く彼岸行事
法隆寺(奈良・斑鳩町)は607年に聖徳太子が創建した世界最古の木造建築群で、お彼岸には「聖霊会(しょうりょうえ)」をはじめとする伝統的な法要が行われる。奈良時代から連綿と続く法要の伝統は、日本の仏教行事の根幹をなすものだ。
東大寺(奈良)——大仏と彼岸法要
東大寺(奈良市)は752年に開眼供養が行われた大仏(盧舎那仏)で名高い。お彼岸の時期には盧舎那仏への彼岸法要が行われ、1,250年以上の歴史を持つ寺院での参拝は格別の体験だ。
成田山新勝寺(千葉)——不動明王の彼岸法要
成田山新勝寺(千葉・成田市)は不動明王を本尊とする真言宗の大本山で、お彼岸には護摩法要(ごまほうよう)が行われ、先祖の供養と現世の厄除けを祈る参拝者で賑わう。
雨に濡れた長野・善光寺の山門と参道。宗派を超えた「無宗派」の霊場として知られ、全国から参拝者が集まる。春・秋の彼岸会では本尊の阿弥陀如来三尊像(秘仏)への祈りが捧げられ、7年に一度の御開帳に合わせて彼岸参拝をする巡礼者も多い。
Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 / photo by Sl-Ziga
彼岸参り・墓参りの作法
お墓参りの正しい手順
1.
お墓の清掃: 雑草を抜き、墓石を水で清める
2.
花・線香・水の供え: 墓前に花と線香を供え、水を掛ける
3.
供え物: おはぎ・ぼたもちなどの食べ物を供える(食べ物は持ち帰るのが基本)
4.
合掌礼拝: 手を合わせて先祖への感謝と冥福を祈る
5.
後片付け: 線香の燃え残りを片付け、食べ物は持ち帰る(カラスや虫が来るため)
お彼岸の期間
2026年の日程
春彼岸
2026年3月17日(入り)〜3月23日(明け)
秋彼岸
2026年9月20日(入り)〜9月26日(明け)
よくある質問
お彼岸は仏教のみの行事ですか?
お彼岸は仏教行事として発展したが、現代の日本では宗派を問わず「先祖供養の季節」として広く行われている。神道でも先祖へのお参りは行われるが、「彼岸」という言葉自体は仏教用語だ。
お彼岸に必ずお墓参りをしなければなりませんか?
厳格な義務はないが、先祖供養の観点から多くの家族がお墓参りを行う。遠方のため直接行けない場合は、菩提寺に墓のお世話(代参・塔婆供養)を依頼することも一般的だ。
おはぎとぼたもちの食べ方・選び方に作法はありますか?
特に決まった作法はなく、普通に食べてよい。地域や家庭によって「こしあん派」「粒あん派」の好みがある。春彼岸は牡丹(ぼたん)が咲く季節なのでぼたもち、秋彼岸は萩(はぎ)が咲く季節なのでおはぎという使い分けが伝統だ。
彼岸花を採って家に飾ってもよいですか?
彼岸花は球根を含む全草が有毒(アルカロイド)で、誤食すると危険だ。家に持ち込む際は子どもや動物が触れない場所に飾り、皮膚に触れた後は手を洗うこと。また、田んぼのあぜや墓地の彼岸花を無断で採るのはマナー違反だ。
お彼岸に避けるべきことはありますか?
仏教的な観点では、お彼岸は慎みの時期とされ、過度な享楽(宴会・飲酒・賭け事など)を避けるべきとする考え方もある。現代では厳格な戒律はなく、先祖を偲んで静かに過ごすことが基本的な姿勢とされる。
最終更新: 2026年4月25日
── 了 ──
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