大山咋神と大山祇命(おおやまつみのみこと)は同じ神ですか?
いいえ、別の神です。大山咋神は「山の杭を打つ主」として山の支配・農業・醸造を司り、日吉大社・日枝神社の主祭神です。大山祇命は「山の祖神(おやがみ)」として山岳全般を主宰し、愛媛・大山祇神社を総本社とします。どちらも山に関わる神格ですが、祭祀系統・信仰圏・お社が異なります。信仰圏が近接することから混同されがちですが、厳密には区別する必要があります。
日吉大社が総本社であり、日枝神社(東京)はその分社に当たります。ただし「格上・格下」という表現は適切ではなく、それぞれが独自の歴史と崇敬を積み重ねた神社です。日吉大社は全国3800社の山王社の根本神社、日枝神社(東京)は江戸・東京の総鎮守として、それぞれ固有の役割と祈りを担っています。
山王信仰は、比叡山延暦寺(天台宗の総本山)の鎮守として日吉大社の神々が位置づけられたことから、天台宗と不可分の関係にあります。神仏習合(神と仏が一体となる信仰)の思想のもと、大山咋神命の本地仏(ほんじぶつ——神の本来の姿である仏)は釈迦如来とされました。天台宗寺院が全国に広まるにつれて山王社も各地に勧請され、山王信仰は日本全土へと伝播しました。明治の神仏分離(1868年)によってその習合関係は制度上解消されましたが、今も日吉大社の境内には比叡山との深い縁が刻まれています。
日枝神社(東京)の山王祭は毎年6月に執り行われ、神幸祭の行列は一般参加者も沿道での観覧ができます。日吉大社の山王祭は毎年4月中旬〜下旬に行われ、日本三大奇祭の一つ「山王祭」として、比叡山から琵琶湖へと神輿が渡御する壮観な神事が見られます。どちらも事前に各社の公式情報をご確認ください。祭礼の日に静寂に身を置くと、何百年もの信仰の重みが境内に満ちていることを感じることでしょう。