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BASICS
灯籠とは何か——神と仏に捧げる光の形と歴史の見どころと参拝の作法
灯籠は寺院・神社・庭園に設置された光を捧げるための石造や木造の構造物だ。仏教の常夜灯として大陸から伝来し、神社や庭園へと広がった。春日大社の約3,000基の石灯籠、厳島神社の釣灯籠、日光東照宮の青銅灯籠など各地に美しい灯籠が残り、参拝時に観察すると神社の歴史と格式が見えてくる。
目次
MOKUJI
灯籠の起源——大陸から寺院、そして神社・庭園へ
灯籠の種類と構造
全国の代表的な灯籠スポット
参拝時のポイントとゆかりのスポット一覧
よくある質問
春日大社の石灯籠群。参道に立ち並ぶ約3,000基の石灯籠は奈良を代表する風景のひとつ。
Wikimedia Commons
**灯籠(とうろう)**は、神社・寺院・庭園などに設置された光を納めるための石・金属・木製の構造物だ。暗闇に明かりを灯し、神仏に光を捧げるという信仰的行為は、日本の宗教空間に欠かせない要素として定着している。春日大社の3,000基超の石灯籠が並ぶ参道、厳島神社の海上を彩る釣灯籠、日光東照宮を飾る巨大な青銅灯籠——いずれも光の文化の豊かさを体現している。
灯籠の起源——大陸から寺院、そして神社・庭園へ
仏教とともに伝来した灯籠
灯籠は6〜7世紀の仏教伝来とともに大陸(中国・朝鮮半島)から日本に伝わったとされる。仏前に光を供える「常夜灯(じょうやとう)」として、仏の永遠の加護を示すためのものだった。奈良時代に建立された東大寺・興福寺・法隆寺などに現存する石灯籠が、日本最古の灯籠の一部とされる。
神社・庭園への展開
平安時代以降、灯籠は神社の参道や境内にも設置されるようになった。神仏習合の影響で仏教の燈明(とうみょう)の文化が神道にも浸透し、参拝者が奉納する「奉納灯籠」の慣習が生まれた。鎌倉・室町時代には武家の寄進によって大型石灯籠が各地の神社に建立された。さらに安土桃山・江戸時代には茶の湯の文化とともに庭園灯籠が発達し、多様な形式が生まれた。
光を奉納する意味
燈明(とうみょう)——神仏に光を捧げる行為——は、仏教においては仏の知恵と慈悲の光を象徴する。神道では清浄な光が神域を照らし、邪気を払うとされる。暗闇の中に光を灯し続ける常夜灯は、信仰の継続性と神仏への永遠の帰依を示す象徴だ。
灯籠の種類と構造
厳島神社の釣灯籠。海上の社殿回廊に吊り下げられた銅製の灯籠が、潮風の中で神域を照らす。
Wikimedia Commons / Fg2 (Public domain)
石灯籠の基本構造
標準的な石灯籠は上から「宝珠(ほうじゅ)笠(かさ)火袋(ひぶくろ)中台(なかだい)竿(さお)基礎(きそ)」の6部位で構成される。火袋は実際に灯火を収める部分で、四方に窓が開いている。各部の比率・形状が灯籠の様式を決定する。
主要な灯籠の形式
形式
特徴
代表的な場所
春日灯籠
丸く張り出した笠・六角火袋
春日大社・諏訪大社
雪見灯籠
足が短く安定感がある
茶庭・水辺の庭園
織部灯籠
竿にキリスト教的な像が彫られた例もある
茶庭
釣灯籠
軒や枝に吊り下げるタイプ
厳島神社・春日大社
春日型と銅灯籠
春日大社(奈良)の石灯籠は「春日型」と呼ばれ、丸みを帯びた笠と六角形の火袋が特徴だ。約3,000基(一説に約2,000基)の石灯籠と約1,000基の釣灯籠(計約3,000基)が境内に立ち並び、「万燈籠」の行事では一斉に灯されて幻想的な雰囲気を作り出す。
全国の代表的な灯籠スポット
日光東照宮の石灯籠群。全国の大名から奉納された200基以上の灯籠が境内を荘厳に彩る。
Wikimedia Commons
春日大社の万燈籠——光の海
春日大社(奈良県)は約3,000基の石灯籠と1,000基以上の釣灯籠を有する、日本最大の灯籠集積地だ。**万燈籠(まんとうろう)**の行事——節分(2月)と盂蘭盆(8月)の年2回——では全ての灯籠に火が灯され、「光の海」とも呼ばれる幻想的な景観が生まれる。
厳島神社の釣灯籠——海上の幻想
厳島神社(広島県)の社殿回廊には、多数の釣灯籠が吊り下げられている。夜間に灯が入ると、海上に浮かぶ回廊と反射する海面が相まって、他では見られない幻想的な情景が生まれる。朱塗りの回廊と青銅の灯籠の組み合わせは、厳島神社の建築美の核心の一つだ。
日光東照宮の青銅灯籠——将軍の権威
日光東照宮(栃木県)には徳川将軍家や全国の大名が奉納した多数の青銅灯籠が並んでいる。その大きさと精緻な彫刻は江戸時代の技術の粋を示しており、中にはオランダ東インド会社から奉納されたものも含まれる。将軍の権威と各大名の忠誠を示す政治的な記念物としての側面も持つ。
平安神宮・三嶋大社の燈火
平安神宮(京都)の時代祭や三嶋大社(静岡)の例大祭では、多数の灯籠に火が入り、境内が光に包まれる祭礼の夜が演出される。こうした万燈籠形式の行事は全国の神社・寺院で行われており、参拝の体験を一層深いものにしてくれる。
参拝時のポイントとゆかりのスポット一覧
春日大社の万灯籠神事。節分と中元の夜、境内すべての灯籠に火が灯され、幽玄な光景が広がる。
Wikimedia Commons / Degueulasse (CC BY-SA 4.0)
灯籠を観察する3つのポイント
奉納者の銘を確認する:石灯籠の竿や基礎に彫られた銘文には、奉納者の名前・年代が記されていることが多い。歴史の証人として読み解く楽しみがある。
形式を比較する:春日型・雪見型・織部型など形式の違いが時代や地域の様式を物語る。
万燈籠行事に参加する:年に数回だけ全灯籠に火が入る幻想的な夜間行事は、灯籠の本来の姿を体感できる最高の機会。
ゆかりのスポット一覧
関東
日光東照宮(栃木県日光市)——将軍・大名奉納の大型青銅灯籠が境内を埋める。
鶴岡八幡宮(神奈川県鎌倉市)——源頼朝以来の格式ある境内に石灯籠が並ぶ。
明治神宮(東京都渋谷区)——深い森の参道に立つ石灯籠が神域の静寂を演出。
東海・関西
三嶋大社(静岡県三島市)——静岡東部随一の大社。例大祭の夜に灯籠が輝く。
春日大社(奈良県奈良市)——日本最多の灯籠集積地。万燈籠行事は必見。
中国
厳島神社(広島県廿日市市)——海上回廊の釣灯籠が夜間に放つ幻想的な光景。
よくある質問
万燈籠はいつ見られるか
春日大社の万燈籠は節分(例年2月3日前後)と盂蘭盆(8月14〜15日)の年2回行われる。開催日・時間は春日大社の公式サイトで事前に確認を。他の神社でも例大祭の夜に灯籠に火が入る場合があり、各神社の年間祭礼カレンダーを確認するとよい。
石灯籠の奉納者はどうやって確認できるか
多くの石灯籠には竿や基礎部分に銘文が彫られており、奉納者の名前・年代・奉納理由などが記されている。大型神社の奉納灯籠には江戸時代の大名や幕府の名前が刻まれていることもあり、歴史の証人として興味深い。
灯籠はさわってよいか
一般参拝者が灯籠を触ることは通常推奨されない。石灯籠は長年の風化・苔・汚れが積み重なったものも多く、素手で触れると灯籠の保存状態に悪影響を及ぼすこともある。遠目から眺め、写真で記録することが最良の観察方法だ。
家庭の庭に灯籠を置く意味は何か
庭の灯籠は茶の湯文化(茶道)の発展とともに普及した。茶庭には路地に雪見灯籠・織部灯籠などが設けられ、夜間の茶席を照らした。現代では純粋な庭園装飾として使われることが多いが、光を通じて場を清める意味も持つとされる。
最終更新: 2026年4月25日
── 了 ──
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