昭和10年(1935年)、創業者・細川力蔵が手掛けた「目黒雅叙園」の施設として建てられた木造建築で、現在はホテル雅叙園東京の敷地内に唯一残る戦前の建物として東京都指定有形文化財(平成21年=2009年指定)となっている。99段の長い階段廊下が7つの和室——十畝の間、漁樵の間、草丘の間、静水の間、星光の間、清方の間、頂上の間——を結ぶ独特の構造で、各室は厚さ約5cmの欅板を用いた階段で連なる。最大の特徴は、昭和初期の日本画壇を代表する荒木十畝・磯部草丘・礒田湖龍斎・荒木寛畝・橋本静水・鏑木清方らが天井画・障壁画・欄間彫刻を手掛けた贅を尽くした装飾で、金箔や螺鈿を用いた工芸と画業の結晶が部屋ごとに異なる宇宙を構成する。雅叙園は「庶民や家族連れが気軽に入れる本格料亭」として昭和6年(1931年)に開業し、その豪華絢爛な装飾から「昭和の竜宮城」と称された。戦後に大半が建て替えられる中、百段階段は奇…