布引の滝は、神戸市中央区を流れる生田川上流に位置し、雄滝・雌滝・鼓ヶ滝・夫婦滝の四瀑から成る。その来歴は古く、平安時代初期にはすでに貴族社会に知られていたとされ、9世紀には在原業平が雄滝を詠んだ和歌が『伊勢物語』に収録されたと伝わる。以来、『古今和歌集』『新古今和歌集』など勅撰和歌集にも歌枕の地として繰り返し詠まれ、平安貴族の遊覧・物見の名所として定着した。中世・近世を通じても景勝地としての評価は衰えず、多くの文人・旅人が訪れたとされる。明治時代に入ると近代水道の整備に伴い布引貯水池が上流に建設され(1900年竣工)、滝周辺の自然環境とともに保全が図られた。昭和初期には国の名勝に指定され、自然…