墨染寺は貞観16年(874年)、清和天皇の勅願によって創建されたと伝わる。寺名の由来となった「墨染桜」の伝説は創建と同時期に遡る。歌人・上野峯雄が親友であった関白・藤原基経の死を悼み、「深草の野辺の桜し心あらば今年ばかりは墨染に咲け」と詠んだところ、翌年の春から境内の桜が薄墨色に咲くようになったと伝えられ、この故事が寺名および「墨染」という地名の起源とされる。中世以降の詳細な沿革は明らかでないが、伏見の地に法灯を継ぎ、日蓮宗の寺院として現在に至るとされる。近世には周辺が「深草」の地として和歌や物語に詠まれた風雅な土地柄であり、当寺もその文化的文脈の中に位置づけられてきた。近代以降も伏見の住宅街…