正覚庵は1290年(正応3年)、臨済宗東福寺派の大本山・東福寺の第5世住持である山叟慧雲によって開創されたと伝わる塔頭寺院である。創建当初から東福寺境内に位置し、同派の法灯を守り続けてきた。中世を通じて東福寺の塔頭として法脈が継承されたとされるが、詳細な変遷については必ずしも明らかではない。近世以降、筆を供養する「筆塚」の文化と結びつき、「筆の寺」としての独自の信仰形態が形成されていったと考えられる。近代以降も書道・絵画など筆を用いる芸術に携わる人々の信仰を集め、毎年11月23日に営まれる「筆供養」の行事が定着した。この行事では全国から使い古された筆が納められ、筆塚において焚き上げ供養が行われ…