密教の教義では「悟りを開いた後も衆生済度のために王者の姿をとり続ける」と説くためだ。他の如来(釈迦・阿弥陀・薬師)は出家した修行者の清貧な姿で表されるが、大日如来は「宇宙の根本仏として一切を照らす光」を体現するために装身具をつける。「宝冠をつけた如来」を見たら大日如来と判断してよい。
東寺(教王護国寺)の講堂には、空海が構想した密教の宇宙観を21体の仏像で三次元的に表現した「立体曼荼羅」が安置されている。中央に大日如来(国宝・平安時代)が座り、周囲を四如来・四菩薩・五大明王・四天王・帝釈天・梵天が取り囲む。入堂料500円で間近に鑑賞でき、「生きた宇宙地図」を体感できる日本でも稀有な空間だ。
高野山では奥之院・根本大塔・金堂の三か所が特に重要だ。奥之院参道(約2km)では弘法大師空海の廟所(御廟)に参拝でき、「大師は今も生きて瞑想中」という入定信仰を体感できる。根本大塔は内部に大日如来坐像と四菩薩を安置した真言密教の根本道場。宿坊に宿泊すると翌朝の勤行(早朝の護摩祈祷)に参加できる。
智拳印は左手の人差し指を立て、右手で握り込む形だ——「右手が左手の人差し指を包む」と覚えると分かりやすい。法界定印は両手を腹の前で重ね合わせ、親指の先を合わせる形——「禅定印(釈迦如来)」に似ているが、親指の向き・高さが異なる。智拳印が「握る」動作なのに対して、法界定印は「包む・支える」動作として覚えるとよい。
根来寺(和歌山県岩出市)の大伝法堂(根本大塔)に安置された「大日如来・阿弥陀如来・釈迦如来」の三尊像は国宝に指定されている。密教(大日如来)と顕教(阿弥陀・釈迦)の両方を一つの堂内に収めた珍しい構成で、鎌倉時代の作とされる。根来寺は豊臣秀吉の根来攻めで伽藍の大半が焼失したが、大伝法堂は奇跡的に残存した。