正暦3年(992年)、一条天皇の勅願により創建された。開山は兼俊僧都と伝わり、菩提山真言宗の大本山として奈良市東方の菩提山に伽藍が営まれた。本尊は薬師如来。創建当初は広大な寺域に多くの堂宇が立ち並び、隆盛を誇ったとされる。室町時代には僧侶たちが酒造技術の革新に取り組み、「菩提酛(ぼだいもと)」と呼ばれる乳酸菌を活用した酒母製造法を確立した。これは現代の清酒醸造技術の原点とされ、正暦寺は「日本清酒発祥の地」として広く知られるようになった。中世から近世にかけて幾度かの兵火や災害により伽藍の多くが失われたとされるが、法灯は絶えることなく継承された。近代以降は菩提山真言宗の本山として法脈を守り続けてお…