天平8年(736年)、僧・玄昉が現在地に近い場所に清水寺を創建したのが福智院の前身とされる。玄昉は聖武天皇の信任を得た法相宗の高僧であり、当初の寺院は奈良仏教の隆盛の中に位置づけられていた。その後、寺勢は一時衰退したとみられるが、鎌倉時代に真言律宗の高僧・叡尊(興正菩薩)によって再興された。叡尊は西大寺を拠点として戒律の復興と社会救済事業に尽力した人物であり、福智院もその活動の場のひとつとして整備されたとされる。現在の本尊である地蔵菩薩坐像(重要文化財)はこの鎌倉時代の再興期に造立されたと伝わり、像高約2.73メートルという奈良最大の地蔵菩薩として「福智院の大地蔵」の名で広く信仰を集めてきた。…