摺鉢山古墳は東京都台東区の上野公園内に現存する前方後円墳で、関東地方の古墳の中でも都市公園内に保存されているという点で極めて珍しい存在である。全長は約73メートルで、5世紀中頃に築造されたと推定される。現在は不忍池の北側、上野公園の一角に位置し、公園来訪者に古代の気配を伝えている。上野の杜は徳川将軍家の菩提寺・寛永寺の境内地として近世以降に整備されたが、その地下には古代の豪族が眠る墳墓が存在していたことになる。前方後円墳という形態は当時のヤマト王権の支配が関東にまで広がっていたことを示す証拠であり、古代における政治権力の浸透を物語る貴重な遺産だ。現在は木々に覆われた丘として公園利用者に親しまれており、墳丘上からは上野公園を見渡すことができる。東京という大都市の中心部に古墳が残っていること自体が、この地の歴史の深さを物語っている。