高雄薬師堂は、京都市右京区高雄の山中、神護寺への参道沿いに位置する小堂である。神護寺は781年(天応元年)に和気清麻呂が創建した神願寺を前身とし、824年(天長元年)に空海が入寺して真言密教の根本道場として整備したとされる。薬師堂はその神護寺の信仰圏のなかで、参道を行き交う人々の病気平癒を祈る場として古くから営まれてきたと伝わる。密教においては薬師如来が現世利益・治病の本尊として重視されることから、真言密教の拠点であった神護寺周辺にこうした薬師信仰の堂宇が成立したとみられる。中世以降、神護寺が度重なる戦火や衰退を経るなかにあっても、地域の人々の篤い信仰によって堂宇は守り継がれてきたとされる。近…