learn/[id]

基礎
8 分で読める
BASICS
御岩神社|188柱を祀る常陸の霊山と参拝ガイド
茨城県日立市の御岩神社は188柱を祀る神仏習合の霊山。縄文の祭祀遺跡から徳川光圀の筆染めまで——本宮・賀毗禮神宮・薩都神社の三層構造と周辺霊場の巡り方を、参拝順路と御岩山系9社の関係を含めて解説します。
目次
MOKUJI
御岩神社が「188柱の山」と呼ばれる理由
御岩山「三層構造」の参拝順路
御岩山系を巡る1〜3日プラン
御岩神社参拝時の実用情報
よくある質問
結論から言うと、御岩神社は「日本の神社をほぼすべて参拝したのと同じ」と言われる188柱を祀る茨城県日立市の山岳霊場で、縄文時代の祭祀遺跡を持ち、徳川光圀(水戸黄門)が『大日本史』編纂時に筆染めの儀を行った神仏習合の生きた信仰空間です。 御岩神社を中心に、奥宮の賀毗禮神宮、御岩山系の薩都神社武生神社、そして「東の伊勢」と呼ばれる村松大神宮まで、半径30km圏に古代以来の聖地が密集しています。
この記事は、御岩神社を中心とする常陸国北部の霊場巡礼を計画している方に向けた実践的なガイドです。御岩神社単体の参拝で満足してしまうと、御岩山系全体が物語る「常陸の古代神話」の世界を見逃します。本宮・奥宮・里宮の三層構造を理解し、関連する10の霊場をどう巡れば1〜3日で最深部まで到達できるかを、所要時間・登山難度・歴史的文脈と共に解説します。
御岩神社が「188柱の山」と呼ばれる理由
古代以来の祭祀地としての来歴
御岩神社の境内地・御岩山(標高530m)からは、縄文時代晩期(紀元前1000年頃)の祭祀遺跡が発掘されており、文献以前から信仰の対象であったことが考古学的に確認されています。文献上の初出は奈良時代和銅6年(**713年)成立の『常陸国風土記』**で、「かびれの高峰に天つ神鎮まる、その名を立速日男命と曰す」と記されました。「かびれ」は現在の賀毗禮神宮の名に直接受け継がれている古名です。
188柱を祀るに至った経緯
当初は立速日男命(たちはやひおのみこと)一柱を祀る山岳信仰の社でしたが、江戸時代に水戸藩初代藩主・徳川頼房が出羽三山(羽黒山・月山・湯殿山)の神々を勧請し、続く二代藩主・徳川光圀が「御岩大権現」と改称して祭祀を整備しました。この過程で常陸国内外の主要神々が次々と合祀され、最終的に188柱に達したのです。
「ここに参拝すれば日本の神社をほぼすべてに参ったのと同じ」と言われるのは、この合祀の歴史的経緯に由来します。とはいえ、これは単なる便利さの話ではなく、御岩山という山岳霊場が古代以来の自然信仰と中世以降の神道整備、近世の藩主祭祀整備という時代ごとの宗教的努力の累積として成立したことを物語ります。
神仏習合を今に伝える「斎神社」
明治元年(1868年)の神仏分離令と続く廃仏毀釈運動によって、全国の神社から仏像が撤去されました。しかし御岩神社は氏子と藩主縁者の強い意志により仏像の引き渡しを拒否し、現在も**斎神社(さいじんじゃ)には大日如来坐像(茨城県指定有形文化財)と阿弥陀如来像(日立市指定文化財)**が安置されています。これは関東の主要神社で神仏習合形態を物理的に残す稀有な例です。
御岩山「三層構造」の参拝順路
本宮(拝殿):参道入口から徒歩10分
御岩神社の本宮(拝殿)は山麓の参道入口から徒歩約10分。三本杉(推定樹齢500年・幹周8.48m・樹高約50m、林野庁「森の巨人たち百選」+ 県指定天然記念物)を仰ぎ見つつ、苔むした石段を登ります。本宮の祭神は国之常立神・大国主神・伊邪那岐命・伊邪那美命ほか22柱。ほとんどの参拝者はここで折り返しますが、それは御岩山参拝の入口に過ぎません
表参道奥宮「賀毗禮神宮」:本宮から徒歩60-90分
賀毗禮神宮(かびれじんぐう)は御岩山の中腹(標高約490m)に鎮座する表参道奥宮。本宮の脇から表参道を登り、約60〜90分で到達します。祭神は天照大神・邇邇藝命・立速日男命の三柱。社殿の背後には**「今上石(きんじょうせき)」と呼ばれる磐座があり、その奥から湧き出る霊水「御多満里(おたまり)の池」は、徳川光圀が『大日本史』編纂を始める際に筆染めの儀**を行った場所として伝わります。
裏参道奥宮「薩都神社中宮」と里宮
裏参道奥宮の薩都神社中宮には、長く険しい登山ルートが必要です。一般参拝者は薩都神社(常陸太田市里野宮町)の里宮を訪れることが多く、こちらは『常陸国風土記』にも記される延喜式内社。**御岩山頂の立速日男命が里へ遷座した「里宮」**として、古代神話の枠組みで本宮・奥宮と一体の祭祀圏を形成します。
御岩山系を巡る1〜3日プラン
1日目:御岩神社核心ルート
時刻
スポット
所要
09:00
御岩神社 本宮参拝
60分
10:00
表参道登拝開始
11:30
賀毗禮神宮 到達・参拝
30分
13:00
本宮へ下山
60分
14:30
薩都神社(常陸太田)参拝
30分
御岩山の本質を1日で味わうコース。登山靴と十分な水・行動食は必携です。冬季(12月〜3月)は積雪・凍結のため奥宮登拝は推奨されません。
2日目:常陸太田の山岳信仰社めぐり
時刻
スポット
所要
09:00
西金砂神社(72年に1度の磯出大祭礼で名高い)
90分(登山含む)
11:30
東金砂神社(西と対をなす姉妹社)
60分
13:30
武生神社(源義家の太刀割石伝承)
90分(登山含む)
16:00
真弓神社(坂上田村麻呂蝦夷征討伝承)
60分
御岩山系と並ぶ常陸太田の修験霊場群。車での移動推奨(公共交通の便が悪い)。
3日目:常陸国二宮と東海村の伊勢
時刻
スポット
所要
10:00
静神社(常陸国二宮、織物の神を祀る延喜式名神大社)
60分
12:00
大甕神社(建葉槌命が天津甕星を封じた宿魂石伝承)
60分
14:00
村松大神宮(光圀建立の「東の伊勢」)
60分
15:30
助川城跡公園(徳川斉昭の海防城跡)
30分
古代神話・伊勢信仰・幕末海防史と性格の異なる4スポットで常陸の重層的歴史を体感できる構成です。
御岩神社参拝時の実用情報
参拝時のポイント
登山装備必須:奥宮への登拝は本格的な山岳ハイキング。スニーカーは不可、登山靴推奨
水分・行動食:表参道沿いには売店なし。500ml×2本以上を準備
服装:夏でも長袖・長ズボン推奨(虫対策・転倒時の擦り傷防御)
時間配分:本宮+奥宮往復で最低3時間、薩都神社まで含めると5時間
冬季注意:12月〜3月は積雪・凍結により奥宮登拝危険、本宮のみの参拝に切り替え
写真撮影:本宮は撮影可、奥宮の磐座周辺は撮影遠慮の表示あり
アクセス
公共交通:JR常磐線日立駅から茨城交通バス御岩神社線で約35分、「御岩神社前」下車すぐ
:常磐自動車道日立中央ICから約10km(無料駐車場あり、紅葉期は混雑)
東京から:JR上野駅から日立駅まで特急ひたちで約1時間40分
よくある質問
御岩神社で「188柱を祀る」とは具体的にどういう意味ですか?
御岩神社の本宮(拝殿)祭神は国之常立神・大国主神・伊邪那岐命・伊邪那美命ほか22柱ですが、御岩山全山の境内地に複数の摂社・末社があり、合計すると188柱になります。江戸時代の水戸藩主・徳川頼房と光圀によって出羽三山系をはじめとする多数の神々が勧請された結果で、「日本の神社をほぼすべてに参ったのと同じ」と言われる根拠です。
宇宙飛行士が宇宙から光の柱を見た場所というのは本当ですか?
当該の宇宙飛行士証言は出典が確認できず、御岩神社側も公式には言及していません。1980年代以降に広まった都市伝説的な逸話で、現代のパワースポット・ブームと結びついて拡散されました。神社の歴史的価値や霊地としての風格はこの伝承の真偽とは独立して、考古学・文献史学の両面から十分に確認できるものです。
奥宮の賀毗禮神宮への登拝にはどのくらいの体力が必要ですか?
本宮(標高約340m)から賀毗禮神宮(標高約490m)まで、標高差150mを表参道で約60〜90分の登りです。初心者でも歩けますが、急坂と石段が多く、軽登山レベルの体力と装備が必要。下山も含めて往復2〜3時間。冬季は積雪・凍結のため一般参拝者は本宮までに留めることを推奨します。
仏像が残っているのはなぜですか?
明治元年(1868年)の神仏分離令と続く廃仏毀釈運動の際、全国の神社から仏像が撤去されましたが、御岩神社は氏子と元水戸藩士らの強い意志により仏像の引き渡しを拒否しました。現在も斎神社内に大日如来坐像(茨城県指定有形文化財)と阿弥陀如来像(日立市指定文化財)が安置されており、関東の主要神社で神仏習合形態を物理的に残す稀有な例となっています。
1日で御岩神社と周辺をどこまで巡れますか?
公共交通利用なら御岩神社(本宮+奥宮)と薩都神社の2スポットが現実的。車利用なら大甕神社静神社を加えた4スポットまで可能。御岩山系の常陸太田4社(西金砂・東金砂・武生・真弓)は登山時間も含めると別日設定を推奨します。
最終更新: 2026 年 4 月 26 日
茨城県日立市御岩山中腹に鎮座する御岩神社本宮(拝殿)。188柱の神々を祀る茨城屈指のパワースポット
Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0 / photo by 京浜にけ
御岩神社の三本杉(樹齢約500年・幹周8.48m)。林野庁「森の巨人たち百選」選定、茨城県指定天然記念物
Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 / photo by Tsuna72
御岩神社参道入口の鳥居と杉並木。古代以来の山岳信仰の入口を示す神聖な空間
Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 / photo by Tsuna72
常陸太田市の西金砂神社本殿。72年に一度の磯出大祭礼で名高い御岩山系の山岳霊場
Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 / photo by Mass Ave 975
那珂市・常陸国二宮の静神社拝殿。延喜式名神大社、織物の神「建葉槌命」を祀る古代以来の格式社
Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0 / photo by Hideyuki KAMON
── 了 ──
この記事は
♡ 役に立った
ゆかりの地を訪ねる
記事で読んだ歴史は、現地に立つとさらに深く実感できます。下のスポットや巡礼コースから、次の参拝先を選んでみませんか。
1. 御岩神社
188柱の神を祀る常陸国「かびれの高峰」、縄文晩期の祭祀遺跡から徳川光圀の筆染めまで——御岩山全山を御神体とし、神仏習合のまま明治を生き延びた茨城屈指の霊山
2. 賀毗禮神宮
『常陸国風土記』記載「かびれの高峰」の本宮、天照大神・邇邇藝命・立速日男命を祀る御岩神社表参道の山頂奥宮
3. 薩都神社
御岩神社裏参道奥宮の里宮、立速日男命を祀る『常陸国風土記』記載の延喜式内社
4. 武生神社
竪破山頂上に鎮座する立速日男命の古社、御岩山賀毗禮神宮と神格を共有する常陸国久慈郡の山岳霊場
5. 真弓神社
真弓山頂に鎮座する古社、平安期の蝦夷征討と源氏伝承を残し、近世水戸藩の篤い崇敬を受けた常陸太田の山岳信仰社
西
6. 西金砂神社
大同元年(806)創建・常陸三大祭「磯出大祭礼」72年に一度の大祭で名高い西金砂山頂の古社
7. 東金砂神社
大同元年(806)西金砂神社と同時創建・東金砂山頂の修験霊場、佐竹氏の篤い庇護を受けた金砂郷二社の片翼
8. 静神社
常陸二宮に列する延喜式内社。建葉槌命を祀り、樹齢数百年の社叢が県天然記念物
9. 大甕神社
星の神・天津甕星を宿魂石に封じた日本神話の伝承が宿る岩場の神社
10. 村松大神宮
「東の伊勢」と称される伊勢神宮直結の古社、天照皇大神を祀る関東屈指の大神宮、東海村の海岸松林に鎮まる聖域
11. 助川城跡公園
天保7年(1836)水戸藩9代徳川斉昭が築いた幕末の海防最前線、異国船を見張った日立海岸を一望する小山頂上の城跡公園
巡礼コース
茨城12社めぐり
全 12 スポットを巡る
巡礼コース
神仏霊場巡拝の道
全 150 スポットを巡る
一 期 一 会
📱
アプリで巡礼を楽しむ
App Store からダウンロード
T · O · K · U